筋伸張反射能力とハムストリングス
筋肉のバネ機能
筋肉には伸張反射能力と言って、筋肉をバネやスプリングのように使う機能や能力があります。
これは筋肉が引き延ばされたら即座に縮もうとする反射能力で、故に伸張反射と呼ばれています。
受容器反射による筋伸張反射
筋肉の緊張度や長さを調整している筋肉中の受容器が、筋肉が瞬間的に伸ばされたら即座に縮もうとする反射信号を送ることによって、意識に上らないまでも自動的に行われる運動機能です。
あらゆるスポーツや運動ではこの筋伸張反射能力が要求されるし、この能力を使いこなすことができれば運動パフォーマンスは格段に上がると言われます。
腕にも脚にもこの能力は備わっていますが、下半身においては全身の運動をつかさどるといってもいいくらいにこの能力の使いこなしが重要となります。
動物の後ろ足
動物が走る時は後ろ足で地面を蹴って、前に放り出された身体が地面に着地する際に前足で受け止め、そしてまた、後ろ足で蹴って・・・を繰り返して速く走ることができます。
なので、後ろ足はこの筋伸張反射能力が特に強力です。
動物が進化して二足歩行になった人間においてもこの特性が引き継がれており、下半身にはこの動物としての後ろ足に備わっていた能力が残っており、筋伸張反射によって走ることをはじめ、跳んだり、素早く動いたりと云った運動が可能となります。
走るという動作に着目してみると、大腿骨が後ろ側にある時に股関節前側の腸腰筋は大きく引き伸ばされ、伸張反射を起こします。
伸張反射によって前に振り出された大腿骨は次に着地しますが、同時に股関節後ろ側にあるハムストリングスは体重を受け止めつつ伸張反射し、勢いよく身体を前に移動させます。
このように走る動作は伸張反射の繰り返しです。
人体の運動の基幹部分
そのような運動を可能にしてくれているのが太ももの後ろ側にあるハムストリングスです。
その強力な伸張反射能力によって、人体の運動の大元をつかさどるといっても過言ではありません。
故障しやすい部位
ただし、その強力さ故に損傷しやすく、陸上競技やサッカーなど、下半身の激しい動きが要求されるスポーツではよく肉離れなどの故障が生じやすい場所です。サッカーなどの試合や練習で肉離れを起こして、その後のケアで当院を訪れる方が少なくありません。
縮めながら伸ばす
筋肉の収縮運動の中でも瞬間的に強い負荷がかかります。
筋肉に強い負荷をかけて収縮させながら同時に引き伸ばすことによって、筋肉をバネのように、強力なゴムのように使うのですから、筋繊維に対する負荷が強く、それに耐えられない場合には筋繊維の断裂、つまり肉離れなどの筋肉の損傷が生じます。
ゴムを必要以上に伸ばしたらバチっとちぎれることがありますが、それと同じです。
ハムストリングスはこのような故障が起こりやすく、日ごろからのケアが非常に大切な筋肉です。
筋肉の柔軟性を保つことによって、そのしなやかさを維持する必要があります。
筋膜リリースで筋拘縮を緩和させ、ストレッチによって筋肉の伸張できる領域を維持し続けることが必要です。
当院の施術において、ハムストリングスのケアは腸腰筋などと同様に欠かせない施術箇所のひとつであり、運動やスポーツに取り組まれる方々のパフォーマンスの向上やコンディショニングの一環として貢献してまいりたいと思います。