施術と能力
施術においては要求される能力があります。
施術家としての知識
手技療法では真っ先に医学的な知識であり、筋肉や骨格の構造や機能、役割を把握していることが挙げられます。
個人差がありますが、手技療法家の知識には目を見張るものがあります。
医師の医者学として必要とされる幅広く深い知識には及ばないとしても、施術の現場で必要とされる骨格、筋肉、内臓、などの専門知識はかなりのものがあると思われます。
現場で役に立つ知識のみが定着しますが、必要に応じて引き出せる知識もあり、それが施術の現場で組み合わされて症状の軽減、解消という目標につながっていくので、それぞれの施術家としての固有の知識になっているものもあります。
施術における触診力
次に、そのような医学的な知識に基づいて骨格や筋肉の状態を把握するための触診力が要求されます。
私は最初に学んだカイロプラクティックのころに、脊椎椎骨の触診を徹底的に鍛え上げました。
椎骨の歪みやずれ、動きの状態などの対する触診力はこの頃に養成されたものです。
次に学んだオステオパシーでは、筋肉、筋膜の状態を触診と圧痛の有無で把握する技術を学びました。
頭蓋仙骨療法における頭蓋骨の動きの触診

何と言っても特異だったのは頭蓋骨の動きを触診するというものでした。
脳脊髄液の循環にともなって頭蓋骨はゆっくりと開いたり閉じたりと云ったように動いており、0.1ミリにも満たないそのわずかな動きを触診するのです。
最初はまったくわからずに「頭蓋骨の動きなんて本当にわかるのか?」と、半信半疑だったのですが、ある時にコツのようなものをつかんでから以降は理解し把握できるようになりました。
それは手の平や指先で頭蓋骨の動きを感じるというよりは、自分の手が患者様の頭蓋骨と融合して頭蓋骨の動きといっしょに頭蓋骨に触れている自分の手も動く、その手の動きを全身でとらえていくといったイメージを持つことで可能となりました。
「動いていると言われれば、そんな気もするな」というくらいの微妙な感覚だったのですが、でも、確かに存在するのだということがわかり、それも、患者様によっては頭蓋骨の左右の動きに違いがあったり、ズレがあったり、動きの幅が大きいところもあれば小さいところもある、といったように自分の思い込みではなく、確かに存在する動きであることが確信出来ました。
頭蓋骨の動きが正常化すると患者様の症状が変化するということが検証材料となって、その確信は深まりました。
この触診力の獲得は私の施術家としての能力を大きく前進させてくれました。
その後、その微細な動きの触診を筋肉、筋膜にも応用できるようになり、それが、現在のオリジナル手技であるハンズオンにつながっています。
この触診能力こそが手技療法家としての大きな財産です。
しかしながら、なんで頭蓋骨の動きがわかるのか、筋肉の細かな状態がわかるのかと言われれば先述にようなイメージによる感覚の獲得にもよるのでしょうが、それ以外には説明の仕様がなく、自分でも何でわかるのかわかりません。
施術の能力
そして、施術そのもの能力もあります。
わかりやすく言えば、筋肉、筋膜、硬膜、内臓の状態を正常化させることができるかどうかの能力です。
言葉では表現することはできませんが、この能力も確かに存在します。
同じレシピと食材を与えても調理人によって出来上がった料理には微妙な違いがあったり、同じレントゲンやMRIといった検査機器を使っても重篤な状態を発見できる医師もいればそうでない医師もいます。
職人としての技

一流のすし職人はさっと握ったシャリの重さにコンマ何グラムかの誤差しか生じません。

江戸時代に日本地図を作製した伊能忠敬は自身の歩数だけで地図を完成させたと言われます。
その精度は高度化した測量技術を持つ海外の技術者も舌を巻くもので、最終的に日本の地図は伊能忠敬のものを採用したと言われます。
このような単に技術とは言えないような「技」の世界もあり、施術家としては、このような能力が現場では必要とされます。
この能力は現場で経験を重ね、試行錯誤によって発見された技、技術に検証を重ねることによってなされる職人の世界と何ら変わらない部分があると思います。
この能力は施術家の天性によるものが大と思われますが、後天的にも強化する方法があり、そのひとつは自身のリラクセーション能力とも言え、私も過去に長い時間、座禅を組んだりしてその向上に取り組んだことがこともあります。
しかし、実際は現場で施術を行なうことがそのまま施術家としての能力を引き上げる訓練になっているとも言えます。
身体という未知の可能性がある領域に携わる者として、施術家としての能力を常に高め続けるということを忘れずに、日々の施術に取り組んでまいりたいと思います。
